企画展

舟越桂
混沌を鮮明に語ること

《森へ行く日》1984年 個人蔵(撮影:落合高仁)

開催期間 2003年6月28日[土]ー 2003年8月31日[日]

その人がこの同じ世界にいるということが私たちの生きていく支えになるような人がいます。その人は日々の生活の中で毎日のように顔をあわせる人かもしれません。遠く離れて暮らし、ひさしぶりの再会を待ち望む人かもしれません。もしかしたらテレビの画面の中だけで会える人、あるいは私たちの心の中にだけ存在する人かもしれません。私たちはそうしたたくさんの人たちに支えられて毎日を生きています。そして私たち自身も他の誰かを支えながら生きています。

現代の日本を代表する彫刻家のひとり、舟越桂がつくり続けてきたのは、そんなかけがえのない人びとの姿です。1951年盛岡に生れた舟越桂は、1980年代に清新な風を吹き込むような作風で美術界に登場、楠を素材とした具象的な人物像によって高い評価を得ました。その後、ヴェネツィアやサンパウロのビエンナーレ、カッセルのドクメンタ、さらにはロンドンやニューヨークでの個展など、その活動は国際的な広がりを示し、人間という存在に深い関心を抱く多くの人びとの注目を受け続けています。

今回の展覧会は初期から最新作までの代表的な彫刻38点に加え、制作の展開を示す素描19点を展示する、初めての本格的な回顧展です。ときに混沌としてその存在を測りかねるようなこの世界と、そこに住む私たち。静かにたたずむ舟越桂の作品たちは、その混沌に鮮明な光を投げかけ、私たちの行く手を照らしだしてくれるかのようです。

《冬の本》
1988年
個人蔵
(撮影:落合高仁)
《教会とカフェ》
1988年
個人蔵
(撮影:落合高仁)
《かたい布はときどき話す》
1988年
名古屋市美術館
(撮影:落合高仁)
《言葉の降る森》
1989年
広島市現代美術館蔵
(撮影:成田弘)
《途切れないささやき》
1990年
個人蔵
(撮影:落合高仁)
《午後の青》
1992年
福岡県久留米市役所蔵
(撮影:早川宏一)
《唐突な山》
1995年
資生堂アートハウス蔵
(撮影:早川宏一)
《冬の会話》
1998年
岩手県立美術館蔵
(撮影:内田芳孝)

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