背後の手前

In Front of the Space Behind
戴背後的前方
背后的前方
배후의 앞

大森博之

OMORI, Hiroyuki
大森 博之
大森 博之
오모리 히로유키

2003(平成15)年
樹脂石膏、蜜蠟
108×80×50cm


作品を生み出す激しい手の跡をとどめる彫刻

A sculpture retaining intense traces of the hands producing the work.
運用強勁有力的手所留下的痕跡而創作出的雕刻作品
运用强劲有力的手所留下的痕迹而创作出的雕刻作品
작품을 만들어 내는 격한 손의 흔적을 남긴 조각


作者自身がこの作品に寄せた次のような文章がある。

「作品はつねに背後の手前にしか生起しない。それは背後への供物と同時に背後への侵犯であり、また手前の余分として切断された 蜥蜴 とかげ の尻尾のように 痙攣 けいれん している。逃げ去った蜥蜴が背後であり故郷であるなら、私の手は恋い慕いながらあの痙攣の訪れを待っている。」

不思議な時空を思わせる言葉であるが、その不思議さは作品に通じる魅力でもある。

素材にこだわり続けてきた大森の作品のなかでも、石膏に 蜜蠟 みつろう をかぶせた本作品のシリーズは代表的な存在である。何度も繰り返して手で撫でられることで生じた石膏の起伏と、それを覆う半透明の蜜蠟の厚み。その執拗なまでの素材と手との連関が大森独自の造形世界を作り出している。