斜光
Oblique Light

版画的ともいえる明快で幾何学的な色面によって画面を構成する島多訥郎の存在は、日本美術院だけでなく、日本画家のなかでも異色だった。風景をはじめ、樹木や小動物にいたるまで、色彩の変容や、光と影による変化を、平明で心地よい色面に還元している。郷里鹿沼に近い栃木県の西境に位置する山並みを思い起こさせる《斜光》も、入り日の前の太陽の光がもっとも赤みを帯びて輝く時間の光の美しさを、表現している。それは若いころの文学志望とういう精神の方向性とつながった、島多訥郎の絵画による詩情ということができる。