フォーエヴァー

Forever

中川政昭

NAKAGAWA, Masaaki

1986(昭和61)年
ゼラチンシルバープリント、割れたガラス乾板、瓶
121×56×11.2cm



研ぎ澄まされた包丁によって、一気に三枚に下ろされた鯛。だが、死はいまだ訪れてはいない。
上段のプリントは、両脇の肉をそぎ落とされながらなおも泳いでいる鯛の姿を、いまは使われなくなったガラス乾板で撮影し、等倍で焼き付けたもの。ガラス乾板とは写真フィルムの前身で感光乳剤を塗ったガラス板である。このプリントの上には「Forever(永遠)」の文字が書き込まれている。

中段は割れたガラス乾板を同じく等倍サイズで密着焼きしたプリント。
下段はさらに砕かれて破片となったガラス乾板を瓶に詰めたもの。「Now(いま)」と書きつけられている。
肉体を失っても生き続ける強靱な生命力そのものが焼き付けられた写真。生と死の狭間を見つめるのに最も適したメディアである写真の神髄を示す作品である。と同時につねに実験的な写真を制作し続けた写真家の神髄でもある。